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作品紹介Vol.4 

 

 

 

 

光の手

 

 F3(22㎝×27.3㎝)

キャンバス・油彩

2020

 

昨年の10月半ば、日展搬入終了後最初に取り組んだ作品であり、最も長期に亘って筆を入れ続けた作品でもあります。今回の個展のキーになる作品だと思いDMにも掲載しました。


強く安定した光は、自分の絵作りに欠かせない要素でした。特に静物画を描くときには北からのひやりとしたブレない光の中で、白い背景・台の上にモチーフを組んで描いていましたが、この作品ではものの捉え方から変えてみるべく、直接光が当たらない場所にモチーフを設置しました(写真1)。


今回はF3号、F4号の2枚を同時進行で制作。それぞれ仏手の角度を変えておきました(写真2-3)。余談になりますが、静物を描くときは必ず2枚同時進行で進めています(写真4-5)。2枚並べることで、アプローチを意識的に変えることができる上、どちらも良く仕上げるように頑張れることが理由です。

さて、形を見つめるというより、堆積する光の粒や空気の層を追いかけるような制作をしてみようと意気込んでスタートしたのですが、いつまでたっても画面はデリケートな色彩のスープのような状態で、全く完成しそうにありませんでした。春が近づいてきたころ、これまでの微妙な色調は残しつつナイフを解禁・画面構成や形態を明快にすることで一気に制作が進みました(写真6-8)。自分が思うハヤトウリやその周りの美しさを表現しようと思ったら、光の粒や空気の層を追いかけるだけでは無理があったようです。

随分遠回りをしましたが、それでも日陰の中のモチーフを描くという経験、自分の色感を発揮しようとする取り組みはとても良かったです。

ちなみに個展のタイトルにある「掌上の光」は、今回の取り組みから出てきた言葉です。
これまでは光を浴びるモチーフを美しいと思って描いてきたのですが、実は光は自分の掌ほどで十分で、日の当たらない場所にも輝きや豊かな色彩や形を見つけることができます。変化する光線の中で対象を観察するから積み重なる時間も制作の大切な要素になるーそんなことを考えました。

描き始めの頃は丸かったハヤトウリ、描き終える頃にはすっかりスリムになってしまいました(写真9)。
でも最後まで美しい色はそのままでした。


その他の作品紹介はこちらから

 

Vol.1「緑の手」 Vol.2「光の庭から」 Vol.3「草花の見る夢」 Vol.5「祭りの日」「代掻く」

Vol.6「黒い馬・祝祭」 Vol.7「振り子とレモン」「花と小鳥と」

 

作品についてのお問い合わせは

アンクル岩根のギャラリー(090-2864-4852)まで。 

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